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ニンジャスレイヤー公式ファンサイト:ネオサイタマ電脳IRC空間

近未来都市ネオサイタマを舞台としたサイバーパンク・ニンジャアクション小説「ニンジャスレイヤー」の日本語版公式ファンサイト。翻訳チームが運営しています。

ヨロシサン製薬バイオテック第2営業部を退職しました

リサーチ/レポート ネオサイタマに生きる はてなブックマーク100超え

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1月25日づけで、ヨロシサン製薬を退職しました。

ヨロシサン製薬といえば毎年の就職活動人気ランキングにおいて常に1位、2位を争う企業であり、魅力的な給与体系や充実した福利厚生、イノベーティブな職場環境で知られています。「なんで辞めるの?」「勿体無い」「絶対後悔するよ」……もう、散々言われました(笑)。

そこはもう、本当に異論の挟みようは無いです。凄くいい会社でした。実際、個人的に自分の人生に思うところあっての退職であり、会社自体への不満は驚くほど少ないんです。私を送り出してくださった職場の皆さんには今後もしっかりと社のため頑張っていただきたいし、応援しています。

つらつらと語ってみます

私が在籍していたのはバイオテック第2営業部です。取り扱いプロダクトはバイオ生物とクローンに関してです。5年間働きました。何度か転職を繰り返した私のキャリアの中では最長になりました。毎日が驚きと新しい出会いの連続で、とても刺激とアチーブメントの多い、濃密な時間を過ごせたと思います。

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しかしながら、私自身の社への貢献という観点から見ると、いかんせん力不足のところが多々あり、周辺の皆さんにはもどかしい思いをさせてしまっていたのではないでしょうか。それはやはり、社が求める人材像と、私自身が理想とする会社員のあり方に少しずつズレというか齟齬が生まれ、時間とともにそれが大きくなり、軌道修正も思うように行かなかったところがありまして、そこが心残りではあります。

ヨロシサン製薬の社風は、外から見ると少し特殊で、面食らうところもあります(もちろん、その特殊さこそが業界トップの業績とイノベーションの源でもあるというのは間違いないです)。非常にスピード・ドリヴンである一方で、社員に求められる諸々のプロトコルは、他の日本企業とは少し勝手が違っているんですね。

現在の私は来月から働く新天地に向けて準備中でして、精神的にはまだヨロシマンとして半分残している状態です。今回の退職エントリを書くのは自分の気持ちを整理するためというのもありますし、皆さんには、完全な外部からの見方とも違う、内情を踏まえた上での幾らか客観的な社の印象についてもお伝えできるかなと考えました。 


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穴に落とされる

下手を打った営業社員の中に、穴に落とされたセンパイがいます。成績のスランプの比喩ではありません。足元の床に穴が開いて落とされ、底に人喰いズワイガニがいて、食べられてしまったのです。

私を含め、基本的にヨロシマンは自社が業界ひいてはネオサイタマの頂点に立っている事に疑いは持っていません。バイオプロダクトにおいて、独占的に扱う特許の規模も追随他社とは桁が違い、ウチ無しでは物事は成り立たない。それだけ取引先に強く出られるというのは間違いなくありました。相手はお客様ではなく、むしろ共に成長していくパートナーとして、ソリューションを提案していました。しかしセンパイの取引先企業は勝手が違っていました。それが死に繋がった。

センパイは模範的ヨロシマンでした。クローン・プロダクトの納入先でのテストの立ち会い時に粗相をしてしまったところ、穴に落とされました。私もさすがに魚介類の餌食になる事を想定して営業をしているわけではありません。自分自身の身に降り掛かった事ではないとはいえ、これは相当精神に堪えました。眠れない日々が続きました。

ハイク会

皆さんの企業では、一回の茶会の所要時間はどのくらいでしょうか。おそらく30分前後だと思うのですが……ヨロシサンでは、だいたい90分は使うんですね。そう、時折「セイコウ・メディア」誌などに写真が載っている、あの茶会室です。

壁際の小さな濠に水が流れていて、その上を、スシを乗せた皿が流れています。あれが一周する前にハイクを詠むわけなのですが、これに適応できない社員がまず振り落とされます。

一般的な企業ですと、茶会参加者が順番に進捗報告要素のあるハイクを読んでいきますが、ヨロシサン製薬は対話形式です。まず上司が上の句を詠み、部下はそれに対するアンサー・ハイクを詠むのです。アンサーには上司に対する精神的なリスペクトと、自分のプロジェクトの進捗に関する報告要素が含まれている必要があります。

(例)
上司:「初雪な」
部下:「鯉の滝登りイノベーション」 

ここで難しいのが、当たり前ですが、上司より技術的に優れたハイクを詠んではいけないという自明のルールと、ヨロシサン独特の対話要素の両立です。上司より巧いハイクを詠むとムラハチになってしまうのはどの企業も共通ですが、そこにこの対話形式が入ってくると、非常にこう、薄氷を踏むというか、綱渡りめいた神経の使い方をすることになります。

ある程度技術がないと、上司の出してきた上の句に対するオーガニックなアンサーができないわけです。単に下手なハイクだと、上司の面目すら潰してしまう事になる。かといって、上司より巧くてもいけない。そうなると、重要になってくるのは、「まず上司がハイクが非常に達者である」という事なんですね。

上司は部下を選べますが、部下は上司を選べません。結局のところ運任せになってしまいがちなところがあるんです。とはいえ、結果論からいくと、この形式のハイクは非常にポジティブなブレストにも繋がるわけで、実際うまく回っています。振り落とされる場合は結局はその社員の力不足なのでしょう。

ハイクが下手な上司よりも下手なハイクを詠むのは至難でしょうが、そもそもハイクが下手な上司は部長や役員のハイクにうまくアンサーできず消えていくことを考えると、うまく回ってはいます。しかしながら私個人は、どうしてもこの形式には最後まで馴染めなかったというのが正直なところです。力不足ですね。


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爆発事故が頻繁に起こる

これは本当につらかった。勿論、取り扱うプロダクトの性質上、爆発事故は絶対に避けられません。ヨロシサン製薬はヒヤリ・ハット概念の順守を行き届かせ、社内の突発事故の発生率を可能な限り下げていっています。実際、事故発生率は必ず前年度を下回る結果を更新し続けているわけです。同分野の他の企業と比較すれば、その安全性は明らか……とはいえ、それはどうしても相対的なものです。爆発するときはする。

それが自分の担当案件だった場合、本当に地獄です。むしろ爆発だけならまだいい方です。研究対象のバイオ生物が脱走して野生化したり、周辺市民を殺したりすれば、我々営業社員がその尻拭いに駆り出されます。昼夜を問わず、関係各所を危機管理部門のエージェントと共に行き来するわけで、四徹、五徹は当たり前。アドレナリン・サプリメントが手放せませんでした。

そしてエージェントはそのようなトラブル対処を生業にする人たちで、常人とは何もかも感覚が異なります。何度か同行した事がありますが、正直、生きた心地がしませんでした。一緒にいるだけでストレスでした。彼らは金属製のマスクをつけ、バラクラバや頭巾を被っています。「面倒になったらお前を殺すぞ」と、真顔で、目を見て言われたことがあります。そういうジョークなんでしょうが、恐怖のあまり、その日の記憶が今でもぼんやりしています。

バイオテック分野はネオサイタマの科学の最先端であり、過酷な戦場です。研究員が心身に傷を負う危険と常に隣り合わせなのは当然です。会社側はそうした中で極力社員を気遣い、サポートする体制を日々改善していっています。彼らは本当にその厚遇に応えていたのか……なぜ自分がこんな大変な苦労を……。生き馬の目を抜く極限状態の現場に身を置くと、他部署への不信感が募っていきます。自分が嫌な人間になっていくのが手に取るようにわかってしまうんです。それがとにかく辛かった。完全に割りきって、ドライに、スピーディーにこなしていく生粋のヨロシマンも沢山おり、彼らが最高の会社を支えています。間違いありません。でも私はそうなれなかった。

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現在の主力製品のひとつ、Y-12型クローンヤクザ。倫理的にどうなんでしょう?

社内のせめぎあい

そうしたわけで、営業部署と研究室の関係はあまり良好とは言えませんでしたし、ビジネスにおける緊張感はむしろ、身内との間で漂っていたように思います。自社内での政治が非常に重視され、礼儀プロトコルは複雑怪奇であり……部署内の調整に必要以上に時間がとられるという事につながっていたようにも思うのです。何しろヨロシサンは巨大なコーポレーションですから、外部のパートナー会社よりも社内の他部署のほうがよほど遠い、という事すら感じられていました(もちろん、それでもなおヨロシサンはアジャイルでイノベーティブな会社であるという事は間違いないです)。

時として迷宮じみた社内組織を上へのし上がる為に必要とされるのは、単純な成績やハイクの良し悪しだけではありませんでした。社内営業、セッタイ、もっと言うと、家柄です。この点が決定的でした。ヨロシサン製薬は実際のところ総合生化学テクノロジーコングロマリットであり、社名と実態はだいぶ異なっています。江戸時代の小さな製薬会社として始まったその時の名前を維持し続けているわけです。そして、この時の創業者一族の血筋が人事において最重要とされるのです。

ヨロシサンは非常にエキサイティングな職場で、イノベーションを尊び、非常にアジャイルで、スピード・ドリヴンです。しかし、ある時点で……ある段階まで昇進した時に……透明な天井の存在に気付かされてしまいました。それが家柄です。トップはヨロシサン一族で占められており、その発言力は絶対なものです。業績を積み上げていくエリートの中のエリートは、ヨロシ血族のDNA注射を受けられるという話もありました。私も血族DNAを注射してもらえるようとにかく頑張りましたが、力及ばずでした。一流ヨロシマンのようには非情になりきれなかったな、というのが正直なところです。

 

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人生とは?

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そんな5年間のなかで、さまざまなものがこぼれていきました。悪銭身につかずと言います。実際、アドレナリンを注射しながら馬車馬のように働いていた頃の収入は確かに多かったのですが、何に使ったのかよく覚えていないうちに、無くなってしまいました。今は当時よりものびのびとした環境で、身の丈にあったビジネスを行っていきたいと考えています。そして自分というものを再度見つめて行きたいという気持ちです。

さて、次の就職先は実際既に決まっていまして、オムラ・インダストリの医療用ロボット部門の営業です。カチグミ・コーポレーションからカチグミ・コーポレーションへの転身ということで、本当にご縁に感謝です。オムラといえば非常にパワーのある会社ですから、私も今後オムラマンとして成長していければと思います。今から興奮が抑えきれません!

繰り返しになりますが、ヨロシサン製薬自体への不満はそれほどありません。本当に素晴らしい、トップを進み続けるにふさわしい企業だと思います。単に私がビジネス・ベクトル的に合わなかったという事だと思います。職場の皆さんの今まで以上のご健勝を祈り、ここに筆を置く次第です。

(ヨロシサン退職者)