ニンジャスレイヤー公式ファンサイト:ネオサイタマ電脳IRC空間

近未来都市ネオサイタマを舞台としたサイバーパンク・ニンジャアクション小説「ニンジャスレイヤー」の日本語版公式ファンサイト。翻訳チームが運営しています。

ニンジャスレイヤーはどこから現れる? 決断的参戦シーンを振り返る(01):ソバ屋台エントリー……ドンブリと箸持参、敵の心を折る

当ブログ「ネオサイタマ電脳IRC空間」は、ニンジャスレイヤーの公式ファンサイト・ブログである。ロックンロールや映画の紹介などもおそらく行うが、メインコンテンツは「ニンジャスレイヤー」がいったいどんな物語なのか、どんな特徴的要素に彩られているかを、様々な角度から紹介していく事にある。

現在頻繁に更新されている登場人物紹介企画の他にも、様々なアプローチを試行錯誤し、この作品を力強く紹介していきたいと考えているので、よろしくお付き合い願いたい。

さて今回は、我らがニンジャスレイヤーの登場シーンにフォーカスしてみたい。

「なぜことさら登場シーンを? この者は何を言っているのか!」そのようにお考えになる方もおられよう。しかし、これについては本編を読んでいただければ、じきに納得が行くはずだ。

群像劇の性質をもつこの物語は、各エピソードにおいて「邪悪なニンジャに虐げられる存在」を主役の視点人物においてドラマを展開させていく事が多い。しばしばニンジャスレイヤーはそうした市民を主役にした物語のクライマックスに出現し、邪悪なニンジャの暴虐をさえぎり、見得を切る。

ニンジャスレイヤーの登場シーンはバラエティに富んでいる。飛行機の上、地下深くに隠された冷蔵庫の中、タクシー運転手……それらはやはり本編の中で触れてこそ100%の刺激が得られるので、ここで一つ一つ挙げて網羅するわけにはいかない。今回は特別に、ニンジャヘッズの間でも特に有名で何かにつけ語られる、ネオサイタマ炎上(1)に収録された「ラスト・ガール・スタンディング」の「ソバ屋台エントリー」を紹介しよう。

 

ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上 (1)

ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上 (1)

  • 作者: ブラッドレー・ボンド,フィリップ・N・モーゼズ,わらいなく,本兌有,杉ライカ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/エンターブレイン
  • 発売日: 2012/09/29
  • メディア: 単行本
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「おちおち食事もできんな。この街は」 __「ラスト・ガール・スタンディング」より

これがニンジャヘッズの間で有名な「ソバ屋台エントリー」である。下記にコミカライズ書籍へのリンクを貼っておこう。

ニンジャスレイヤー(2) ?ラスト・ガール・スタンディング(イチ)?<ニンジャスレイヤー> (角川コミックス・エース)

ニンジャスレイヤー(2) ?ラスト・ガール・スタンディング(イチ)?<ニンジャスレイヤー> (角川コミックス・エース)

 

 

ニンジャスレイヤー (3) ~ラスト・ガール・スタンディング (二)~ (カドカワコミックス・エース)

ニンジャスレイヤー (3) ~ラスト・ガール・スタンディング (二)~ (カドカワコミックス・エース)

  • 作者: 余湖裕輝,ブラッドレー・ボンド,フィリップ・N・モーゼズ,田畑由秋,本兌有,杉ライカ,わらいなく
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/11/07
  • メディア: コミック
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このエントリー(エントリー:入場。ニンジャスレイヤーにおいては、特に、イクサの現場への突入を意味する事が多い)が強く印象に残っている理由を考察してみたところ、下記の三つの大きな原因を抽出することができた。

  1. ソウカイヤのニンジャ、ソニックブームの勝ち誇った口上を、ソバすすり音で遮った
  2. 近くの屋台のノレンを開けて、ドンブリと箸を持って現れた
  3. 突然現れた(それまで「ラスト・ガール・スタンディング」にニンジャスレイヤーの影は一切なかった)

◆ソバすすり音◆

ソニックブームは金糸のニンジャ装束と蛇革の靴を履いた見るからに恐ろしいヤクザニンジャである。彼は真空衝撃波を放つソニックカラテをマスターした手練れであり、ヤモトを圧倒して「ノーカラテ・ノーニンジャ(ジツでどれだけ翻弄しようと鍛え上げたカラテが必ず勝つ)」の原則を見せつけた。ヤモトと読者の我々にとってそれは絶望の瞬間であり、ソニックブームにとっては己の勝利を誇示するべき時間。極めてシリアスな状況だ。これを、うるさいソバすすり音で邪魔したのである。重大な局面においてソバすすり音はいかにも場違いであり、ソニックブームの口上は空回りし、その恐ろしさは脱構築されてしまった。(余談ながら、ソバを上手に音を立ててすする為には文化的継承が必要であり、日本好きの海外の市民がソバを音を立ててすすろうとするが、彼らの食文化において音を立ててすする事がタブーとして身体に染みついている為、意識してもうまく出来ない……そういう事も多いという)

◆ドンブリと箸◆

ニンジャスレイヤーはそののち、屋台からソバのドンブリと箸を持った状態で出現した。しかも彼は「忍」「殺」のメンポをしていた。ソバ・ドンブリを手にした戦士の姿は謎めいており、ソニックブームの意気込みは空回りし、凶悪な威圧感は脱構築されてしまった。不条理が道理を殺す!

◆突然の出現◆

ラスト・ガール・スタンディングはヤモトの物語であり、ニンジャスレイヤーの出現をにおわせる描写はそれまで存在しなかった。彼の出現はあまりにも唐突であり、読者同様、ソニックブームも無関係の殺戮存在が己を狙って現れるなど、当然予期していなかった。予期せぬ存在が予期せぬ状態で現れれば、たちまち度肝を抜かれ、戦闘の主導権を握られてしまうであろう。ニンジャスレイヤーは驚くソニックブームに対し、水面下で綿密に彼の情報を収集し、この奇襲攻撃を計画していた事を明かす。この時点でもはやソニックブームはニンジャスレイヤーの手の上で踊らされていた事を痛感し、そのカラテに影が落ちてしまった。

◆深甚なるカラテ心理戦術◆

こうして挙げたポイントを考察してゆくと、実際ニンジャスレイヤーはこの場においてソニックブームがされたら相当に嫌なポイントを的確に突き、その後のイクサ展開を精神的に制圧にかかっている事がわかる。

ニンジャスレイヤーは恐るべき狩猟者であり、戦闘巧者だ。彼のエントリーそのものが、既に奇襲攻撃の一環なのである。意識外からの出現で度肝を抜き、舌戦で敵の邪悪なプライドを打ち砕き、意気込みを脱臼させ、心を折り、丸裸にし、心胆寒からしめたうえで、カラテでケリをつけるのだ。

ここぞというタイミングで出現し、見得を切る描写には、歌舞伎からの強い影響が見られると考察する専門家も多い。そうした観点から本編を追ってみるのも、また楽しいだろう。

(Tantou)

 

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